•  フットパス活動の記録

フットパス専門家講座 下北線路街とその周辺を歩く
2022.06.04
フットパス専門家講座 下北線路街とその周辺を歩く


[ 講師:浅黄美彦]




変貌する下北沢とひっそりとあるカトリック世田谷教会


6月4日(土)天気:晴参加者:15名



 小田急線の地下化は2013年に完成し、その後線路跡地(地上部)のまちづくりが進められ、2022年「下北線路街」として、世田谷代田駅から東北沢駅まで約1.7キロの整備が完了しました。今回のフットパスでは、この下北線路街の新たなまちづくりを見ながら、かつての小田急線沿線風景、例えば「代田小学校」、環状7号線、スポーツジム、映画館、「金子ボクシングジム」などの記憶を重ね楽しんでみようというのが一つ目の目的です。二つ目は、代々木八幡駅から、元代々木、西原あたりの高級住宅地に点在する建築家(吉阪隆正、横河健、槇文彦、清家清など)の設計した住宅を訪ね、戦前からの郊外住宅地の熟成のようすを眺めてきました。
 昨年からのフットパス専門家講座では、小田急沿線の小田原、伊勢原丘陵、座間、玉川学園、生田、成城学園と歩いてきました。今回のコースを含めると、おおよそ小田急小田原線を踏破したような感じになります。


ダイダラボッチの足跡広場(世田谷代田駅前広場)

 世田谷代田駅前広場から「下北線路街」の西端にある「代田富士356(みごろ)広場」の間は、遊歩道で結ばれています。その沿道には地域複合施設「世田谷代田キャンパス」、賃貸住宅「リージア代田テラス」、店舗兼事務所「カルディノ」など、このまちに必要な施設が丹念に読み込まれ配置されているような印象を受けました。特に東京農大が運営する「農の蔵」は、醸造学科のOBが手掛けた日本酒が常備され、時折訪れたくなる店になりそうです。


農大世田谷代田駅前キャンパス

 「代田富士356広場」から東へ戻り、世田谷代田駅前を過ぎると温泉旅館「由縁別邸代田」がある。近くには旧家と「白髭のシュークリーム工房」があり、遊歩道の緑と相まってリゾート地にいるような気分を味わえます。


由縁別邸代田

 さらに東へ歩くと幼保園、その先に店舗兼用住宅4棟と商業棟からなる新しいスタイルの商店街「ボーナストラック」があります。敷地中央にある共用の庭には、各店舗が自由に家具やサインを設置した、イベント空間にもなる素敵な空間で小休止。かつて、線路で分断されていた密集市街地を繋ぎながら、そこにあったらいいなと思える施設や空間が配置されています。


ボーナストラック

 「ボーナストラック」から鎌倉道を横切り坂道を下ると、ギャラリーやシモキタ園芸部「ののこや」が見える。野趣あふれる植栽空間が気持ちがよい。飲食店街がある「シモキタエキウエ」、駅前市場があった下北沢駅東口の暫定空間を通り過ぎ、「オーゼキ」、「本多劇場」、「あずま通り」という下北らしい細道を抜けると「ザ・スズナリ」が見えます。1981年に下北に最初に開場した小劇場。翌年には「本多劇場」がオープンします。


ザ・スズナリ

 「ザ・スズナリ」の背後に「カトリック世田谷教会」がある。ロマネスク風の木造の教会堂と手作りのルルド、カマボコ兵舎を転用したかつての信徒館など、信者でなくとも思わず祈りたくなるような空間がそこにあります。


カトリック世田谷教会

 下北沢でそれぞれ食事し、代々木八幡駅へ。午後の部は、元代々木、西原、上原あたりの高級住宅地を歩きました。駅前の崖上には横河健氏設計のトンネル住居と「ザ・ツイスト」、「代々木八幡神社」にお詣りし、吉阪隆正氏の「ヴィラ・クゥクゥ」、篠原一男、清家清など、巨匠の住宅を眺め、代々木上原駅にたどり着いて解散しました。
( 写真と文:浅黄美彦)


代々木八幡神社(写真:田邊)

小路と植栽が繋ぐ新しい街の魅力



 午前中は「下北線路街」を、午後からは代々木上原近辺のハイソな住宅街を歩きました。またじっくり訪ねたいと思える歩き甲斐のある充実したコースでした。当日の暑さのおかげで帰り際に寄った打ち上げビールが美味しかったこと!
 私からは、特に印象深い「ボーナストラック」について報告します。世田谷代田から東北沢あたり、小田急線の地下化に伴ってできた「下北線路街」。特に、世田谷代田駅周辺が素敵でした。それぞれに街へのコンセプトを感じる「農大世田谷代田駅前キャンパス」、賃貸テラスハウス、駅前保育園、温泉旅館、茶房や料亭、そして、「ボーナストラック」。ボーナストラックは、賃貸価格を抑えて若い人たちが住みながら商いの冒険もしやすいように企画されたのだそうです。なるほど建築は超ローコストですが、お店のエリアを区切らないオープンな小路と建物配置、植栽の外構計画が素晴らしい。最近はランドスケープにお金をかけた計画が目立ちますね。憧れのリンデンバウムの木(しかも株立ち)とリンデンバウムの花を初めて見ました!



 そして、ただのオシャレな街区とは違う文化的?なお店が集まっていて、多くの人を引き寄せています。(セレクト本屋は是非また行きたいです!) 「下北線路街」を魅力的にしているもう一つの要素が、車が入らない街路をナチュラルで涼しげな植栽が各施設を柔らかく魅力的に繋いでいることです。従来の日本ではないような。でも、どこの国とも違う。新しい街の景色として広がったらいいなぁと、小路と植栽の力を改めて感じました。( 文と写真:木村真理子)
2022.06.04 17:35 | 固定リンク | フットパス