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フットパス専門家講座 三浦半島観音崎に海岸植物を訪ねて
2024.06.22
フットパス専門家講座 三浦半島観音崎に海岸植物を訪ねて
[ 講師:日本植物友の会会長 山田 隆彦 ]

戦前の陸軍要塞史跡に濃い植物群
6月22日(土) 天気:晴 参加者:12名

 三浦半島の観音崎に、海岸植物を訪ねた。この地は、明治時代に陸軍が要塞としていたところで、戦後、公園として整備され、一般に開放された。自然が長く保たれていたこともあり、植物が豊富である。6月23日の予定が、雨予報であったので、前日の22日に繰り上げての観察会となった。事務局の適切な判断で、青空の下、海岸植物を中心にたくさんの植物を訪ねることができた。
 海岸は、強風、強い日差し、水不足、塩の飛散、強い紫外線など厳しい環境にある。その厳しい海岸に生育する植物を海岸植物と呼ぶ。他の植物との生存競争を避けることを選んだ植物達だ。今回観察した海岸植物のいくつかを紹介する。

タイトゴメベンケイソウ科

 草丈は、5~12cmで黄色の小さな花を密生して咲かせる植物で、円柱形の葉は光沢があって分厚い。これは、水分を貯め乾燥に耐えるためで、また光沢があることで、強い太陽の光を反射する働きがある。名前は、高知県の方言で、「大唐米」とよばれた下等な米粒に葉の形が似ていることからついたという。本州(関東以西)、四国、九州の海岸の岩上に分布する。


タイトゴメ

ハマダイコンアブラナ科

 花は、ほとんど終わっていたが、ところどころに淡紫色の花が残っていた。ダイコンが野生化したものといわれ、栽培されているダイコンとは、根が肥大しないだけで、他に区別点はない。果実は数珠状にくびれているが、熟しても裂けずに、くびれた所から切れ、海水に運ばれて散布する。

実際に果実が海面に浮くか試して見た(下の写真
参照)。

 『新牧野日本植物圖鑑』には、ダイコンが野生化したものなので、肥料をやって栽培すると、ふたたび普通のダイコンになると書かれている。余談だが、長さが世界一(1.7m)といわれる大阪府守口市原産の守口大根は、ハマダイコンから淘汰されてできた品種である。


ハマダイコン


ハマダイコンの果実。海水に浮く


ハマダイコンの果実。熟すとバラバラになる

イワダレソウクマツヅラ科

 イワダレソウは漢字で「岩垂草」と書き、よく岩から茎が垂れ下がって生えているので、この名がある。円柱状の穂状で直径2mmほどの小さな花をうろこ状の苞の間につける。地面を這い、草丈を低くして、丈夫な根を張り、風に飛ばされないようにしている。この果実もコルク質になっていて、海水に浮き、遠くに運ばれ分布を広げている。葉は暑くタイトゴメと同じように紫外線からの保護や水分貯蔵の役目をしている。


イワダレソウ

ヤマユリユリ科

 海岸植物ではないが、森の中で、濃厚な香りと共にあちらこちらで見られた。日本特産種であり、東北地方~近畿地方ではふつうに見られるが、北海道・北陸・中国地方・四国・九州には自生はなく、あれば栽培品が野生化したもので、自然分布の狭い植物である。花には黄色のよく目立つ筋があるが、この筋は蜜の在り処を示し、蜜標となっていて、昆虫を誘導する道筋である。


ヤマユリ。黄色い筋に注目

 涼しい海風を背に受け、ムラサキニガナやムクロジ、ネジバナ、マサキ、アサザなどの花を見ながら一日の観察を終えた。

(文と写真:山田 隆彦)

観音崎植物ウォーク

 今回のコースは京急線「浦賀」の近く、三浦半島から東京湾に突き出す観音崎です。海岸に出ると房総半島が見え、海上をコンテナ船などが行き交っていました。ここは元軍港・横須賀の入り口にあたり、永年一般人の立ち入りができなかったため、昔ながらの海浜の樹林が残されています。夏至直後の光線が強烈でしたが林の中の遊歩道なので気にならず、海風が吹いて快適でした。
 最初に目に入ったのは深い緑の樹林とガクアジサイの花です。歩く途中どこでも咲いていました。海沿いの道を歩くとマサキ、トベラ、カミヤツデなど潮風(しおかぜ)に強い木々が次々と現れます。普通の植物は塩害で枯れてしまうため独特の植物相が形成されています。
 道は林の中に続きます。少し高低差はありますが、木が鬱蒼としており探検気分です。途中、地名の基となった海食洞の観音様や「観音埼灯台」(有料なので入っていません)を通り、旧陸軍が作った砲台の跡やトンネルなどもありました。植物はフウトウカズラやヤナギイチゴなど。戦没船員の碑前の公園で昼食。近くで見つけたネジバナやムクロジの花について先生のお話で盛り上がりました。
 海から離れた道沿いでヤマユリに出合いました。林縁でひときわ目立つものです。その後整備された公園のゾーンに入り、カラフルなアガパンサス(紫)、池の中の黄色いアサザの花やオレンジ色のヌマツルギクが印象に残りました。歩きながら会話がはずんだ楽しい一日でした。


マサキ


ムクロジ


ガクアジサイとヤマユリ


ヌマツルギク

(文と写真:森 正隆)
2024.06.22 19:39 | 固定リンク | フットパス