フットパス専門家講座 スミレ博士と行く春の皇居・東御苑
2022.05.22
フットパス専門家講座 スミレ博士と行く春の皇居・東御苑
花の咲き誇る東御苑を訪ねましょう
[ 講師:山田隆彦]
武蔵野の面影が残る二の丸雑木林や
日本の野生バラが季節を告げて
5月22日(日)天気:晴参加者:10名
皇居・東御苑の中でも、私は武蔵野の面影を残している「二の丸雑木林」が好きです。ちょうどウツギが満開で、木全体が花で白くなっていました。
ウツギはスイカズラ科でしたが、新しいAPG分類ではアジサイ科に変わりました。木が古くなると茎の中の髄がなくなり空洞となります。それで「空木」の名がつきました。別名を「ウノハナ」ともいい、香りはありません。唱歌の『夏は来ぬ』にある歌詞、「卯の花の、匂う垣根に杜鵑早も来啼きて----」にある情景は「匂うように真っ白に咲く」という意味です。
「ウツギ」の名がついた植物は科の違うものにもあります。アジサイ科のウツギ以外に、ミツバウツギ科のミツバウツギ、バラ科のコゴメウツギ、ドクウツギ科のドクウツギなどです。いずれも、茎が空洞です。
ウツギ
二の丸雑木林でのウツギ観察(写真::田邊)
二の丸庭園の池には、ヒメコウホネが花をつけていました。コウホネに花は似ていますが、葉の様子がかなり違います。同じスイレン科のコウホネ属ですが、コウホネは、北海道から九州まで分布するのに対して、ヒメコウホネは、本州と四国に生育し、両種とも日本固有種です。違いは、コウホネの葉は水面から突き出していますが、ヒメコウホネは水面に浮かんでいます。コウホネの名は、「河骨」で、太い根茎が白く、骨のように見えるからです。ヒメコウホネの根がどうなのか、私はまだ見ることはかなっていません。
ヒメコウホネ
バラ園には、シロバナハマナスが咲いていました。ハマナスは普通ピンク色で、白花は稀に見られる程度です。ハマナスは北海道から本州の太平洋側では千葉県まで、日本海側は島根県までの海岸の砂地にはえていますが、海岸の公園化で本来の野生のものが見られなくなってきています。佐渡や北海道の野生しているものが、海原をバックに咲く姿は感動ものです。もう一つ、注目すべきバラがありました。イザヨイバラで、葉は日本のサンショウバラにそっくり、花は八重咲です。中国原産のロサ・ロクスブルギー・ノルマーリスという野生バラの八重咲き園芸種で、花の一部が欠けたような姿をしていることから、「イザヨイバラ」の日本名がつきました。
シロバナハマナス(写真:横山)
イザヨイバラ(写真:横山)
他に、お話したい草木はたくさんありますが、特にこの御苑で気になる木は、万葉集に69首も詠まれているタチバナです。チラホラ咲き始めていました。長年、花の写真を撮りたいと、植物園を訪ねるのですが、早かったり、遅かったり、まだ満開状態の花の写真が撮れていません。今年もダメでした。本州(愛知県以西)~沖縄(南大東島)の常緑樹林内に生えています。
タチバナ:香りがすばらしい。
展望台で一休み
皇居・東御苑は、四季折々の花が楽しめ植物観察に最適な所です。ぜひ訪ねられることをお勧め致します。
( 文と写真の一部:山田隆彦)
東京駅からスタート(写真:田邊)
江戸城の二の丸、大奥、天守台を散策しながらの植物観察
私は、「江戸城歴史フットパス」で、ここは、ご案内したことがあるので、今日は、懐かしい風景とともに、山田先生の植物観察と植物のいろいろな面白いお話をお聞きしながら、ゆっくりと散策しました。
まず、大手門から入ると、二の丸入口付近のツツジが鮮やかでした。
二の丸入口のツツジ
かって、二の丸御殿があった二の丸雑木林、二の丸庭園をじっくり散策、ここに武蔵野の雑木林を復元しようと、昭和天皇陛下のお考えを受けて作られたそうです。
二の丸雑木林
昼食後は、展望台から富士見櫓、そして、本丸大芝生、大奥跡の脇の道の茶畑、ばら園、竹林の散策後、天守台跡へ登りました。
大手門から皇居を出て、東京駅まで歩き、ステーションホテルのカフェで一休みして解散しました。ここの生ビール、うまかった、お勧めですね。
( 文と写真:田邊博仁)