他のまちのフットパスをみてみよう 奥多摩駅の周辺を歩く
2024.07.06
[ 講師: 小林 道正]
ダム建設と石灰石運搬でできた 地域の残照の魅力
7月6日(土) 天気:晴のち曇 参加者:13名
JR奥多摩駅は標高343mの東京都で最も高いところにある駅で、山小屋風の駅舎が人気です。土日は多くの登山者で賑わっています。
山小屋風の奥多摩駅舎
「奥多摩駅」は昭和19年にセメントの原料となる石灰石を運搬する鉄道に「氷川駅」という名称で開業しました。戦後になって東京都民の飲料水を確保する「小河内ダム」を建設するために、資材運搬の拠点として大きな役割を果たしました。
<コース紹介>①JR奥多摩駅⇒②奥多摩ビジターセンター⇒③奥多摩工業曳鉄線⇒④奥氷川神社・多摩川の河原(昼食)⇒⑤東京都水道局小河内線(廃線跡)⇒⑥奥多摩むかし道⇒①JR奥多摩駅
コースMAP
奥多摩は『東京の屋根』とよばれるほどの山地で、雲取山(2017m)を頂点にして急峻な山と深い谷が集まっています。地質は古生代と中生代の泥岩や砂岩、チャートなどの他に石灰岩が多く分布しています。
歴史的には『甲州裏街道』とよばれる武蔵国と甲斐国を結ぶ旧青梅街道が通り、交易路として人々が往来していました。
<①JR奥多摩駅から②奥多摩ビジターセンターへ>
「奥多摩ビジターセンター」は自然や文化について分かりやすく展示し解説してくれる施設です。最近は熊の目撃情報や被害が多発しているために、ツキノワグマの生態や習性について剥製や骨格標本を使って解説しています。
<③奥多摩工業の曳鉄線(ひきがねせん)>
「奥多摩工業」は石灰石を採石して運搬している会社です。石灰石はセメントの原料となる貴重な鉱物資源で、多くの建物や道路などを造り発展してきました。近年の石灰石は新しい素材として注目され、紙の原料、食品添加物、化粧品などに利用されているそうです。
「曳鉄線」は「えいてつせん」とか「ひきがねせん」と読まれています。トロッコをロープで繋ぎ線路の上をエンドレスで回している仕組みの鉄道で、スキー場のリフトのイメージです。昭和28年から現在も現役で稼働中です。
杉林の中に鉄橋とトンネルが見えてきました。残念ながら動いていませんでしたが、複線の線路の上にロープに繋がれたトロッコが4台停車していました。左側の線路に乗った2台には石灰石が乗せられ、右側は空でした。
石灰石を運ぶ無人トロッコ
石灰石の採石場は5km先にあり、トンネルと鉄橋で結んで線路を敷き、無人のトロッコを使って石灰石を運搬しています。70年前は空中を通るリフト方式でしたが、需要が増えて運搬量を増やすためにトンネルを掘って地中を通すようにしたそうです。運搬量の増加だけでなく、費用と安全性も格段に向上したそうです。
トロッコ1台の積載量は3t。径32mmのロープで276台のトロッコを36m間隔で繋いでいます。動くスピードは秒速2mとのことでした。
<④奥氷川神社>
さいたま市の「氷川神社」、所沢市の「中氷川神社」とともに『武蔵三氷川』として有名です。
『御神体』の『三本杉』があります。お昼のお弁当は多摩川と日原川が合流する河原で美味しくいただきました。
<⑤⑥東京都水道局小河内線の軌道跡>
「小河内ダム」を建設するために昭和27~32年に使われていた資材輸送用の貨物線跡です。ダム完成後は西武鉄道が観光列車を走らせる計画だったそうです。しかし、採算性や安全性が確保できなかったのか実現することはありませんでした。
線路跡に沿って『奥多摩むかし道』があり、歩くことができます。旧青梅街道です。
JR奥多摩駅に戻ってビールで乾杯しました。
貨物線跡のトンネルの上で手を振るみなさま
奥多摩駅でビールで乾杯!
(文と写真:小林 道正)
石灰石を運ぶトロッコと、トンネルや 線路跡が深い杉林に包まれて
奥多摩駅は『関東の駅百選』の一つで、昭和19年に開業した海抜343mに位置する木造建築。趣のある駅舎です。駅舎のあちこちにツバメの巣があり、ツバメたちも大勢の登山客や観光客を迎えてくれていました。
先ずは「奥多摩ビジターセンター」で奥多摩の成立ち、自然や熊の生態などを受講。奥多摩の初歩的な知識を享受することができました。
奥多摩駅周辺は急峻な山々で、その中腹まで宅地化されており、アクセスの道路も急勾配です。降雪もあることから、コンクリート舗装には溝が刻まれており、冬期の運転は厳しいものと感じられました。
最初の目的地は「石灰石を採掘精製している奥多摩工業㈱」で、氷川鉱山で採掘した石灰石を運搬する森の中を5km走るトロッコ線路(かつては276台を32mmのワイヤーで連結)と鉄橋、トンネルを観ることができました。
午後からの「奥多摩むかし道」は旧青梅街道で全長は奥多摩駅から奥多摩湖までの10kmですが、今回は槐木(サイカチの木)までのアップダウンの約2kmのコース。並行して小河内ダム建設で資材を輸送した貨物線のレールやトンネル・鉄橋跡を間近で観られ、トンネル内を歩くこともできました。最終地「槐木」のサイカチノの木は樹高15m、幹回り3mの大きなサヤがぶら下がることでも知られる古木で、土地の名称にもなっています。
多摩川の源流と急峻な山を背景に、産業遺産や土木遺産に触れながらの楽しい奥多摩駅周辺のフットパスでした。
奥多摩駅2階のカフェ「ポートおくたま」ではクラフトビールが飲めます。最後に「参加された13名の皆さんお疲れさんでした」で乾杯!
ほどよい疲れを感じながらそれぞれ帰路に着きました。
(文:浅野 敏明)
貨物線跡のトンネルから出てきたみなさま(写真:田邊)
ダム建設と石灰石運搬でできた 地域の残照の魅力
7月6日(土) 天気:晴のち曇 参加者:13名
JR奥多摩駅は標高343mの東京都で最も高いところにある駅で、山小屋風の駅舎が人気です。土日は多くの登山者で賑わっています。
山小屋風の奥多摩駅舎
「奥多摩駅」は昭和19年にセメントの原料となる石灰石を運搬する鉄道に「氷川駅」という名称で開業しました。戦後になって東京都民の飲料水を確保する「小河内ダム」を建設するために、資材運搬の拠点として大きな役割を果たしました。
<コース紹介>①JR奥多摩駅⇒②奥多摩ビジターセンター⇒③奥多摩工業曳鉄線⇒④奥氷川神社・多摩川の河原(昼食)⇒⑤東京都水道局小河内線(廃線跡)⇒⑥奥多摩むかし道⇒①JR奥多摩駅
コースMAP
奥多摩は『東京の屋根』とよばれるほどの山地で、雲取山(2017m)を頂点にして急峻な山と深い谷が集まっています。地質は古生代と中生代の泥岩や砂岩、チャートなどの他に石灰岩が多く分布しています。
歴史的には『甲州裏街道』とよばれる武蔵国と甲斐国を結ぶ旧青梅街道が通り、交易路として人々が往来していました。
<①JR奥多摩駅から②奥多摩ビジターセンターへ>
「奥多摩ビジターセンター」は自然や文化について分かりやすく展示し解説してくれる施設です。最近は熊の目撃情報や被害が多発しているために、ツキノワグマの生態や習性について剥製や骨格標本を使って解説しています。
<③奥多摩工業の曳鉄線(ひきがねせん)>
「奥多摩工業」は石灰石を採石して運搬している会社です。石灰石はセメントの原料となる貴重な鉱物資源で、多くの建物や道路などを造り発展してきました。近年の石灰石は新しい素材として注目され、紙の原料、食品添加物、化粧品などに利用されているそうです。
「曳鉄線」は「えいてつせん」とか「ひきがねせん」と読まれています。トロッコをロープで繋ぎ線路の上をエンドレスで回している仕組みの鉄道で、スキー場のリフトのイメージです。昭和28年から現在も現役で稼働中です。
杉林の中に鉄橋とトンネルが見えてきました。残念ながら動いていませんでしたが、複線の線路の上にロープに繋がれたトロッコが4台停車していました。左側の線路に乗った2台には石灰石が乗せられ、右側は空でした。
石灰石を運ぶ無人トロッコ
石灰石の採石場は5km先にあり、トンネルと鉄橋で結んで線路を敷き、無人のトロッコを使って石灰石を運搬しています。70年前は空中を通るリフト方式でしたが、需要が増えて運搬量を増やすためにトンネルを掘って地中を通すようにしたそうです。運搬量の増加だけでなく、費用と安全性も格段に向上したそうです。
トロッコ1台の積載量は3t。径32mmのロープで276台のトロッコを36m間隔で繋いでいます。動くスピードは秒速2mとのことでした。
<④奥氷川神社>
さいたま市の「氷川神社」、所沢市の「中氷川神社」とともに『武蔵三氷川』として有名です。
『御神体』の『三本杉』があります。お昼のお弁当は多摩川と日原川が合流する河原で美味しくいただきました。
<⑤⑥東京都水道局小河内線の軌道跡>
「小河内ダム」を建設するために昭和27~32年に使われていた資材輸送用の貨物線跡です。ダム完成後は西武鉄道が観光列車を走らせる計画だったそうです。しかし、採算性や安全性が確保できなかったのか実現することはありませんでした。
線路跡に沿って『奥多摩むかし道』があり、歩くことができます。旧青梅街道です。
JR奥多摩駅に戻ってビールで乾杯しました。
貨物線跡のトンネルの上で手を振るみなさま
奥多摩駅でビールで乾杯!
(文と写真:小林 道正)
石灰石を運ぶトロッコと、トンネルや 線路跡が深い杉林に包まれて
奥多摩駅は『関東の駅百選』の一つで、昭和19年に開業した海抜343mに位置する木造建築。趣のある駅舎です。駅舎のあちこちにツバメの巣があり、ツバメたちも大勢の登山客や観光客を迎えてくれていました。
先ずは「奥多摩ビジターセンター」で奥多摩の成立ち、自然や熊の生態などを受講。奥多摩の初歩的な知識を享受することができました。
奥多摩駅周辺は急峻な山々で、その中腹まで宅地化されており、アクセスの道路も急勾配です。降雪もあることから、コンクリート舗装には溝が刻まれており、冬期の運転は厳しいものと感じられました。
最初の目的地は「石灰石を採掘精製している奥多摩工業㈱」で、氷川鉱山で採掘した石灰石を運搬する森の中を5km走るトロッコ線路(かつては276台を32mmのワイヤーで連結)と鉄橋、トンネルを観ることができました。
午後からの「奥多摩むかし道」は旧青梅街道で全長は奥多摩駅から奥多摩湖までの10kmですが、今回は槐木(サイカチの木)までのアップダウンの約2kmのコース。並行して小河内ダム建設で資材を輸送した貨物線のレールやトンネル・鉄橋跡を間近で観られ、トンネル内を歩くこともできました。最終地「槐木」のサイカチノの木は樹高15m、幹回り3mの大きなサヤがぶら下がることでも知られる古木で、土地の名称にもなっています。
多摩川の源流と急峻な山を背景に、産業遺産や土木遺産に触れながらの楽しい奥多摩駅周辺のフットパスでした。
奥多摩駅2階のカフェ「ポートおくたま」ではクラフトビールが飲めます。最後に「参加された13名の皆さんお疲れさんでした」で乾杯!
ほどよい疲れを感じながらそれぞれ帰路に着きました。
(文:浅野 敏明)
貨物線跡のトンネルから出てきたみなさま(写真:田邊)