•  フットパス活動の記録

フットパス専門家講座 「横浜自然観察の森」を訪ねて
2024.10.06
[ 講師:日本植物友の会会長 山田 隆彦 ]
  
自然の異変を感じさせる消えた植物たち

10月6日(日) 天気:曇り 参加者:14名

 「横浜自然観察の森」は、「多摩・三浦丘陵群」の一部で、横浜市最大の緑地。1986年に日本で初めての自然公園として開園した。
この観察会で見ていただきたかった植物の内、ネナシカズラの群落とイヌセンブリに出合えなかったのは残念なことであった。
 寄生植物のネナシカズラは、ピクニック広場のクズやセイタカアワダチソウにとりついて覆いかぶさっていた。2023年10月のことである。ところが今年(2024年)の10月には見られず、突然に消えてしまって1株も確認できなかったのである。理由はわからない。どこかに残っているのではと探し回ったが見つからない。ここを管理している自然観察センターの方にも尋ねたが、どこにもないという。
 イヌセンブリは、センブリと違って、葉っぱを噛んでも辛くない。薬用には使われない。神奈川県では、現在、この地でしか見られない。絶滅危惧種に指定されている。これも消えてしまったのか、センターの方が探し回った足跡が残っていたが、1本も見つからなかったという。なにか自然に異変が起きているのではないかと危惧する。


ネナシカズラ2023.10.13

スダジイブナ科
 スダジイの実(堅果)がわんさと付いていた。10日後に訪ねたら実っていて、ドングリは今にも下に落ちそうになっていた。この実は生でも食べられる。本州から九州まで分布して、日本の暖帯林の最重要樹種の一つで、暖地の森を代表する木である。かつては薪炭林として利用していたが、今はシイタケ栽培のほだ木に利用されている。

 スダジイの森では、花期になるとくすんだ薄い黄色で一帯を彩り、独特の香りを漂わせる。人によっては不快な臭いでもある。


スダジイ2024.10.6


スダジイ2024.10.16(10日後)

ママコノシリヌグイタデ科
 すごい名前である。漢字では、「継子の尻拭い」と書く。茎や葉には、刺がいっぱい生えている。これで継子のお尻をふくという。ひどい継母である。ピンク色に見えているのはがくで、花弁はない。


ママコノシリヌグイ2024.10.6

ツルマメマメ科
 野原や道端にふつうに見られるつる植物で、淡紫色の花を付ける。ダイズの原種といわれ、学名(世界共通名)は、グリキネ・マックス・ソヤといい、ソヤは醤油syoyuに由来している。


ツルマメ2024.10.6


ガマズミガマズミ科
 ガマズミの果実が赤く実っており、一際目立った。赤い色の果実は主に鳥に食べてもらって種子を遠くに運んでもらうため、目立った色をしている。この赤い実の中に種が1個入っている。名前は、実をかむと酸っぱいので、「かむ酢実」から転化してガマズミという説や、ズミは、この果実を使って衣類をすり染めした「染め」の転化という説もある。

ガマズミ2024.10.6

 目的とした植物は見られなかったが、ススキの根元に寄生植物のナンバンギセルを見つけ、帰りのバス停近くでは、午後3時になると咲きだす熱帯アメリカ原産の帰化植物、ハゼラン(別名サンジソウ)の赤い花を見ながら観察会を終えた。


ハゼラン2024.10.6

(文と写真:山田 隆彦)

秋の草花に親しんだ一日で、森の歩き方を新たに発見

 9月に入っても猛暑が収まらず、秋の訪れが待ち遠しくなっていたのですが、ようやく秋の気配が感じられるようになった10月最初の日曜日、山田先生のご案内により、秋の草花に親しむ一日を過ごすことができました。
 「横浜自然観察の森」は、雑木林・草地・水辺など、多様な自然に恵まれ、これまでに多くの野鳥をはじめ、約3,500種類もの動植物が確認されているそうです。
 山田先生を先頭に、鬱蒼とした森に整備されたネイチャートレイルを進みます。参加者の明るい声が響き、会話も弾みます。


山田先生による植物解説


自然植生豊かなトレイルを歩く

 山田先生のご案内で森の小径を歩くと、次々に可憐な草花が見つかります。独りで漠然と歩いているときには、たくさんの森の宝物を見落としていたことに気づかされます。森の歩き方の新たな発見でもありました。
 煎じて飲むとすぐに薬効(胃腸病)が現れるゲンノショウコの他、ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)の名前の由来なども聞きながら、楽しく学ぶことができました。


シロヨメナ


ゲンノショウコ

(文と写真:宇佐美 均)
2024.10.06 20:29 | 固定リンク | フットパス
【緑地管理報告 9/8(日)】
2024.09.09
9/8(日)快晴 9:30~12:00 参加者6人

先月はオオブタクサ刈りで時間を費やし、お蔭でオオブタクサは影を潜めました。
これにはカナムグラも一役買っていて、なんと2本のオオブタクサがカナムグラに
襲いかかられて、折れていました。

草刈り機3台が蔓延るカナムグラを刈り取り、見た目がずいぶんスッキリしました。
草刈り機の威力は大きいです。ただ暑いなか、これを操作するのは大変な労力です。

緑地では虫の声が賑やかでした。そのうち楽しい事がありそうです。


追伸 本日、緑地ボランティア募集の看板をあげました。
参加者が増えるといいな。  
(記:鈴木由)



2024.09.09 23:24 | 固定リンク | 緑地管理
【緑地管理報告 8/4(日)】
2024.08.05
8/4(日)快晴 9:00~11:30 参加者7人

前回7月21日作業は看板修復が主体となり、オオブタクサ等が相当刈り残され、
次回9月の作業日前に開花結実する恐れもあるため、臨時作業日として本日を設定し、
里山コアメンバーで対応した。

①草刈り
刈払機3台を利用して草丈3mを超すオオブタクサ、絡みつくカナムグラ、
しつこいカントウネザサと格闘して、山道沿い等の雑草を刈り払った。

②看板設置
宿通りから入って切通し手前の三叉路には切通し案内看板が無く、
慣れない訪問者の便宜を図るため、既存看板脇に案内看板を立てた。
(記録:合田)

 


2024.08.05 22:24 | 固定リンク | 緑地管理
【緑地管理報告 7/21(日)】
2024.07.23
7/21(日)快晴 10:00~12:00 参加者8人


今回は緑地の整備として草刈り、風雨で散乱した木の枝の片付け、経年劣化した道標の作り替えをする。

緑地はオオブタクサやカナムグラで覆われて成長の早さを実感。
2メートル以上に伸びたオオブタクサの茎は太く固く鎌で倒そうとすると跳ね返された。
隣地から倒れ込んだらしい木や雨風で飛散した枯れ枝を集めて集積場へ運ぶ。
傷んだ道標を新しくし、「宿緑地」、「布田道」「関屋」の三枚を新しく作り直す。
完成した道標は、道行く人に緑地の存在を伝えてくれる役目を果たしてくれそうだ。
皆の力が結集した美しい道標が清々しい。 (記録:新納)

追:7/21の活動は道標作り等で草刈が十分に出来ませんでした。臨時に8/4(日)9時から
活動します。是非ご協力ください。(事務局:伊藤)


  
2024.07.23 08:12 | 固定リンク | 緑地管理
他のまちのフットパスをみてみよう 奥多摩駅の周辺を歩く
2024.07.06
[ 講師: 小林 道正]
ダム建設と石灰石運搬でできた 地域の残照の魅力
7月6日(土) 天気:晴のち曇 参加者:13名

 JR奥多摩駅は標高343mの東京都で最も高いところにある駅で、山小屋風の駅舎が人気です。土日は多くの登山者で賑わっています。


山小屋風の奥多摩駅舎

 「奥多摩駅」は昭和19年にセメントの原料となる石灰石を運搬する鉄道に「氷川駅」という名称で開業しました。戦後になって東京都民の飲料水を確保する「小河内ダム」を建設するために、資材運搬の拠点として大きな役割を果たしました。
<コース紹介>①JR奥多摩駅⇒②奥多摩ビジターセンター⇒③奥多摩工業曳鉄線⇒④奥氷川神社・多摩川の河原(昼食)⇒⑤東京都水道局小河内線(廃線跡)⇒⑥奥多摩むかし道⇒①JR奥多摩駅


コースMAP

 奥多摩は『東京の屋根』とよばれるほどの山地で、雲取山(2017m)を頂点にして急峻な山と深い谷が集まっています。地質は古生代と中生代の泥岩や砂岩、チャートなどの他に石灰岩が多く分布しています。
 歴史的には『甲州裏街道』とよばれる武蔵国と甲斐国を結ぶ旧青梅街道が通り、交易路として人々が往来していました。
<①JR奥多摩駅から②奥多摩ビジターセンターへ>
「奥多摩ビジターセンター」は自然や文化について分かりやすく展示し解説してくれる施設です。最近は熊の目撃情報や被害が多発しているために、ツキノワグマの生態や習性について剥製や骨格標本を使って解説しています。
<③奥多摩工業の曳鉄線(ひきがねせん)>
 「奥多摩工業」は石灰石を採石して運搬している会社です。石灰石はセメントの原料となる貴重な鉱物資源で、多くの建物や道路などを造り発展してきました。近年の石灰石は新しい素材として注目され、紙の原料、食品添加物、化粧品などに利用されているそうです。
 「曳鉄線」は「えいてつせん」とか「ひきがねせん」と読まれています。トロッコをロープで繋ぎ線路の上をエンドレスで回している仕組みの鉄道で、スキー場のリフトのイメージです。昭和28年から現在も現役で稼働中です。
 杉林の中に鉄橋とトンネルが見えてきました。残念ながら動いていませんでしたが、複線の線路の上にロープに繋がれたトロッコが4台停車していました。左側の線路に乗った2台には石灰石が乗せられ、右側は空でした。


石灰石を運ぶ無人トロッコ

 石灰石の採石場は5km先にあり、トンネルと鉄橋で結んで線路を敷き、無人のトロッコを使って石灰石を運搬しています。70年前は空中を通るリフト方式でしたが、需要が増えて運搬量を増やすためにトンネルを掘って地中を通すようにしたそうです。運搬量の増加だけでなく、費用と安全性も格段に向上したそうです。
 トロッコ1台の積載量は3t。径32mmのロープで276台のトロッコを36m間隔で繋いでいます。動くスピードは秒速2mとのことでした。
<④奥氷川神社>
 さいたま市の「氷川神社」、所沢市の「中氷川神社」とともに『武蔵三氷川』として有名です。
『御神体』の『三本杉』があります。お昼のお弁当は多摩川と日原川が合流する河原で美味しくいただきました。
<⑤⑥東京都水道局小河内線の軌道跡>
 「小河内ダム」を建設するために昭和27~32年に使われていた資材輸送用の貨物線跡です。ダム完成後は西武鉄道が観光列車を走らせる計画だったそうです。しかし、採算性や安全性が確保できなかったのか実現することはありませんでした。
 線路跡に沿って『奥多摩むかし道』があり、歩くことができます。旧青梅街道です。
 JR奥多摩駅に戻ってビールで乾杯しました。


貨物線跡のトンネルの上で手を振るみなさま


奥多摩駅でビールで乾杯!

(文と写真:小林 道正)

石灰石を運ぶトロッコと、トンネルや 線路跡が深い杉林に包まれて

 奥多摩駅は『関東の駅百選』の一つで、昭和19年に開業した海抜343mに位置する木造建築。趣のある駅舎です。駅舎のあちこちにツバメの巣があり、ツバメたちも大勢の登山客や観光客を迎えてくれていました。
 先ずは「奥多摩ビジターセンター」で奥多摩の成立ち、自然や熊の生態などを受講。奥多摩の初歩的な知識を享受することができました。
奥多摩駅周辺は急峻な山々で、その中腹まで宅地化されており、アクセスの道路も急勾配です。降雪もあることから、コンクリート舗装には溝が刻まれており、冬期の運転は厳しいものと感じられました。
 最初の目的地は「石灰石を採掘精製している奥多摩工業㈱」で、氷川鉱山で採掘した石灰石を運搬する森の中を5km走るトロッコ線路(かつては276台を32mmのワイヤーで連結)と鉄橋、トンネルを観ることができました。
 午後からの「奥多摩むかし道」は旧青梅街道で全長は奥多摩駅から奥多摩湖までの10kmですが、今回は槐木(サイカチの木)までのアップダウンの約2kmのコース。並行して小河内ダム建設で資材を輸送した貨物線のレールやトンネル・鉄橋跡を間近で観られ、トンネル内を歩くこともできました。最終地「槐木」のサイカチノの木は樹高15m、幹回り3mの大きなサヤがぶら下がることでも知られる古木で、土地の名称にもなっています。
 多摩川の源流と急峻な山を背景に、産業遺産や土木遺産に触れながらの楽しい奥多摩駅周辺のフットパスでした。
 奥多摩駅2階のカフェ「ポートおくたま」ではクラフトビールが飲めます。最後に「参加された13名の皆さんお疲れさんでした」で乾杯!
 ほどよい疲れを感じながらそれぞれ帰路に着きました。
(文:浅野 敏明)


貨物線跡のトンネルから出てきたみなさま(写真:田邊)
2024.07.06 20:02 | 固定リンク | フットパス