•  フットパス活動の記録

フットパス専門家講座「牧野記念庭園」と「石神井公園」を訪ねて
2023.09.10
[ 講師:日本植物友の会副会長山田 隆彦 ]
牧野富太郎が
晩年を過ごした跡を訪ねた
9月10日(日) 天気:晴参加者:14名

 昨年はNHKの朝ドラ「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎がちょっとしたブームを巻き起こした。
このこともあり、9月10日に牧野富太郎が晩年を過ごした「練馬区立牧野記念庭園」と、近くにある「都立石神井公園」を訪ねた。その日は日曜日であったので、入場制限がされ並ぶのではないかと心配したが、簡単に入場できた。
 牧野富太郎がこの地に居を移したのは、1926(大正15/昭和元)年、64歳の時である。当時は、東京府北豊島郡大泉村(現在の東京都練馬区東大泉)の地名であった。妻の寿衛(すえ)子が、場所を選定し建てたと言われている。ここで牧野富太郎は94歳の生涯を終えた。その間、新種として命名した植物は1500種以上にもなる。
 紙面の関係で、牧野記念庭園に植えられている主な植物3種について紹介しようと思う。
スエコザサ(イネ科)
牧野記念庭園の中で一際目立つのは、富太郎銅像のある囲いの中に植えられているスエコザサである。転居して2年後に逝去した妻の寿衛子に献名したもので、寿衛子の亡くなる前の年に富太郎が仙台市で発見したササである。



スエコザサに囲まれた富太郎銅像

 学名(世界共通の名前)はSasaella ramosa (Makino)Makino var. suwekoana (Makino) Sad.Suzukiで変種名の種形容語に寿衛子の名前が付けられている。ちなみにramosaは「枝分かれした」という意味である。
本州の宮城県以北に見られるササで、アズマザサ(東笹)の変種とされている。この辺ではどこにでも生えているアズマネザサもアズマザサとともに、牧野富太郎が命名している。
 スエコザサの特徴は、葉の片面の縁が裏に巻き、縦方向に皺があること、葉の表面には白くて長い毛がところどころにあり、裏には毛が生えている。また、茎を包んでいる皮(鞘)には毛がないことも特徴である。
寿衛子の墓石は、谷中天王寺にあり、そこには、富太郎が詠んだ二つの句、「家守りし妻の恵みや我が学び」、「世の中のあらん限りやすゑ子笹」が刻まれているという。



牧野記念庭園内、スエコザサに囲まれ二句が刻まれた石碑(写真:田邊)

ヘラノキ(アオイ科)
 入り口から少し中に入ったところに大きな木がある。練馬の銘木になっているヘラノキで、これも牧野博士が命名している。樹皮が縦に細かく割れているのですぐにわかる。
 名前は花のついている花序に「苞」というへら状の形をしているものがあり、この姿から名がついた。苞は蕾を包み、保護していた器官である。ヘラノキの果実は径4mmほどの球形をしていて、熟すと苞がついたまま落ちる。そのとき、ヘラの形をした苞が、翼のかわりとなり、回転しながら風で遠くまで運ばれ散布される。



ヘラノキの樹皮



ヘラノキの花
(6月、小石川植物園)

ヒメアジサイ(アジサイ科)

 花は他のアジサイと同じで梅雨期に咲き、牧野富太郎が戸隠の民家で見つけ、名前をつけたもの。花が優美で葉に光沢のあるアジサイとは違うと気づきヒメアジサイの名で新種として発表した、と案内板には書かれている。現在は、エゾアジサイの系統とされ、発見当時と違う学名が使われている。私は、まだ花を見たことがなく、6月には是非訪ねたいと思う。この植物は「らんまん」でも紹介された。



ヒメアジサイ

牧野記念庭園を散策後、石神井公園へ向かった。ここではマコモやゴキヅルなどを観察し、帰路についた。(文と写真:山田 隆彦)



ご参加のみなさまと(都立石神井公園)(写真:田邊)


牧野富太郎の情熱をスエコザサに見る

西武池袋線「大泉学園」駅から歩き始めて、右手に大きなダイオウショウが目につきました。そこが「練馬区立牧野記念庭園」でした。牧野富太郎が人生の後半30年ほどを過ごしたところです。標本数40万点、書籍数万冊はとんでもない数で、学校の教室がいくつも必要なほどの量です。残された書斎と書庫は一部とはいえ信じられないほどの狭さでした。万巻の書を全て読むことは不可能です。読むべきポイントを正確に見抜き、理解し記憶し、活用できる人が稀にいて、牧野はそういう一人だったのでしょう。
庭に牧野の胸像を囲むようにスエコザサが茂っています。病に伏す愛妻壽衛(すえ)に感謝を込めて命名したことはよく知られています。残念ながら壽衛は発表論文を見ることはできませんでした。また、最初は独立種とされていましたが、今はアズマザサの変種とされています。改めてじっくり観察することが出来たのは、今回参加した一番の目的でした。
若い頃わざわざ上京して購入したという顕微鏡も展示されています。倍率の変換も出来ず単純な構造です。それでも家が買えるほどの値段だったそうです。それを駆使して正確な花の細かい解剖図を書き込んだ牧野式植物図は、その後の植物学の発展に貢献しました。
庭園を出て、暑い住宅街を通って「都立石神井公園」に向かいました。「三宝寺池」ではミソハギやヒオウギが目を惹きました。ヒオウギは町田では見られません。種子が黒く、かつて習った夜の枕詞「ぬばたま」という名もあることを教わりました。初めて見たシロネ、付属の植物園ではカリガネソウや関東にはないスズムシバナなどを見ることができました。「石神井池」では改めてマコモを確認し、水辺に普通というゴキヅルも初めて見ました。
季節を変えてまた訪れてみたいコースでした。「石神井公園」駅に向かう緩い坂道はもう足ががくがく、杖を取り出してしまいました。でも、駅前のビールはおいしかった。
(文と写真:田中 良也)



スエコザサ(写真:田中)



ヒオウギ(アヤメ科)(写真:田中)

2023.09.10 13:09 | 固定リンク | フットパス
農と緑の管理
2023.09.03
「鎌倉街道小野路宿ふるさとの森」を管理するために

 皆さんは私たち「みどりのゆび」が管理している緑地の正式名称をご存知ですか。「鎌倉街道小野路宿ふるさとの森」といいます。
 「ふるさとの森」とは、町田市のホームページで都市づくり部公園緑地課の中に「ふるさとの森は、市内の美しい緑地景観、歴史的環境を保護すること及び貴重な動植物が生育する自然環境の保全を目的としており、現在43箇所が指定されています。」と説明されています。
 この43カ所のうち、昭和62年(1987年)10月、10番目に指定となったのが私たちの管理する小野路宿緑地です。
 管理委託契約書も2013年まで毎年交わされています。そこには、ふるさとの森の管理は「(1)緑地の地形、植生、施設等の観察点検をし、ゴミの不法投棄等については市に通報をする(2)緑地の維持保全のため、市の保全作業に協力し、軽易な除草、 清掃を行う(3)緑地の保全と自然保護について周辺住民の理解と協力が得られるように努める」と目標づけられています。当時の担当者の説明としては、本来は市がやるべきふるさとの森の保全を市民団体が協力支援し、保全を維持するための地形、植生、ゴミなどの管理を行うことが主たる目的でした。したがって除草や清掃が第一の目的ではなく、市民が緑を楽しみ慈しみながら維持することと理解しています。また周囲の地元の方たちの理解や協力を得ることも大きな役割です。2014年からは公益的活動団体として、他の400ほどの市民団体と同様に月1回の清掃活動のみが義務付けられていますが、「ふるさとの森」という制度がある限り私たちは「ふるさとの森」としての管理目標を遂行しています。
 緑地から通ずる小野路の切通は、たいした特色もないベッドタウンと思われていた町田市が、自分たちの魅力に気づき、観光によるまちづくりに目覚めた原点でした。この小野路の緑地から、今の自信に満ちた町田市が再建されたと言っても過言ではない大事な緑地です。「ふるさとの森」としての矜持を保ちながら、管理していきたいと思います。 (文:事務局 神谷 由紀子)


カナムグラと挌闘して達成感

9月3日(日) 天気:晴参加者:9名

都心から電車を乗り継ぎ鶴川に降りると、いつも 陽の光が明るいと感じる。別所から小道を通り宿緑地に着くと大きく深く呼吸したくなる。ここは時折サイクリングのグループが「こんにちは」と気持ち良さそうに走り抜ける。
今日は2ヵ月振りの作業日。前回のオオブタクサは、するりと簡単に根も抜けたが、カナムグラは大小の樹々や草むらに巻き付いて手強い。
チェーン・ソーを使う男性お二人は緑地に伸びた雑草も刈り、Kさんと私達女性6名ははびこっているカナムグラに向かうが、トゲトゲが絡み合って簡単にはいかない。力自慢の私も“エイヤー”と全力で格闘し、夢中で沢山を引き抜いた。作業小屋裏を流れる小川は枯枝や枯竹で塞がれていて、皆できれいにする。作業は はかどり、皆で除去した雑草の山と、きれいに整地された緑地を何度も眺め、達成感に浸った。
裏山近くではムラサキシキブの大株を見つけた。きれいな紫の実を沢山付けていて、夏のお花を見るのが楽しみです。(文:松本 美津子)



恵泉女学園大学の田んぼ作業は、楽しみがいっぱい

10月7日(土)天気:晴 参加者:5名

 小野路に残る恵泉女学園大学の田んぼ作業で、秋の稲刈り実習には、会員4名と孫(7歳)が一緒に参加しました。
 孫は今年で3回目ですが、2回目からは鎌を使いました。去年の稲刈りでは刈った稲を交差させたり、くるっと回して前年の稲で 束ね、天日干しにしました。
 周囲にはカエルやバッタ、カマキリ、トンボもいて、里山を楽しみながら作業しました。








お孫さんが大活躍の稲刈り(写真:恵泉女学園大学)


 初夏の田植えも楽しみです。学生さんの実習ですので、先生方が苗、田おこし、水張り、ロープ張りと全て準備してくださり、私達は植えるだけです。初めての時はゴム草履を紐で巻き付けて田んぼに入りましたが、途中からは裸足になり、先生に教わりながら植えていきました。
 田んぼの畦付近の水溜りにはメダカ、ドジョウの稚魚も見かけます。


孫のもうひとつの楽しみは作業の後、里山交流館の縁側に腰掛け、庭を眺めながらのお昼とかき氷を食べる事のようです。
今年の田植えも楽しみにしています。
(文:名城 千穗)



鎌倉街道小野路宿緑地(写真:田邊)



まだまだ暑い日差しの中、たっぷり汗をかいた木陰は壮快!

10月22日(日) 天気:晴参加人数:6名

 待ちきれず? 事前に現地をご案内いただいていた小野路の竹林管理。20年前の山登りウェアを引っ張り出し、初参加させていただきました。
 10時開始。管理地は竹林と隣り合わせて木陰となっており、とても気持ちの良いスポットです。夏の間に繁った膝上丈の下草を大きな鎌でザザザッと、布田道に近い入口から奥の方にある竹林目指して刈り始めました。最初は要領が分からず、また入口付近は倒木があって刈り難く、草の根を掘り起こしてしまったのですが、掘り起こせば土の中の草の種が散って来春芽を出すことを思い出し、文字通り「草刈り」に変えて続行しました。さて期待していた栗拾いは、栗が地面に落ちてしまっており収穫出来ませんでした。残念に思っていたところ、Mさんお手製『栗の渋皮煮』のおやつが振る舞われ、皆さん美味しい笑顔。デパ地下で流行中モンロワールのチョコとも相性バッチリで、ほっこりした休憩となりました。
 私は今年、例年に比べ草木に触れる事が少なかったので、草刈りであっても土や草木と遊べて、大変良い時間を過ごせました。また我武者羅に頑張ってもないのに気分壮快。小野路の魅力かもしれません。次回は虫よけと帽子、露よけの足元と膝のカバーを持参して臨みたいと思います。
(文:鈴木 いと子)



2023.09.03 13:26 | 固定リンク | 緑地管理
他のまちのフットパスをみてみよう涼風をもとめて御嶽渓谷を歩く
2023.07.22
[ 講師:小林 道正]

渓谷の地形と河原の石、名水の秘密を探る

7月22日(土) 天気:晴参加者:11名

 JR青梅線「沢井」駅→多摩川の川原<石拾い>→清流ガーデン「澤乃井園」<石の標本づくり・昼食>→「小澤酒造」<酒蔵・仕込み水見学>→「御嶽渓谷」<散策>→「玉堂美術館」・砂金探し→JR青梅線「御嶽」駅
 小澤酒造は「澤乃井には2種類の名水があることで美酒を造ることができます」と説明しています。「2種類の名水」とは何でしょうか。それは奥多摩の地質が大きく関わっています。 「秩父中古生層」という古生代から中生代に形成された地層のことです。この地層の岩石を多摩川の川原で拾い集め「石の標本」を作ります。
 そして多摩川では「砂金採り」がブームになっています。上流に武田信玄の隠し金山といわれている「黒川金山」があり、長い年月をかけて流れ下って来たらしいです。









湧き水の説明図 砂金採りの例



涼しい東屋で石の標本作り(写真:横山) 小石の標本

1.川原で石拾い
涼風を求めて多摩川の川原に下りてみると凄まじい暑さでした。日陰がないのと河原の石の照り返しで予想以上です。ゴムボートでラフティングを楽しんでいる若者達が羨ましかったです。



御岳渓谷の急流を下るラフティングゴムボート

 ここでは御嶽渓谷の地形と河原の石について説明し、石の標本箱を作っていただく予定でしたが、真夏の炎天下では熱中症が心配なので、小石を拾ってもらうだけにしました。
 小石は、標本箱に入る大きさに注意して、色や模様の違うものを少し多めに拾うようにしました。石の色は水に濡らすと鮮やかになります。白、黒、灰色、青、緑色、赤などいろいろあることに気付いていただけました。色の違いによって丸いものやゴツゴツして角張っていることに気付いた方もいましたが、木陰へ移動することにしました。
 2.清流ガーデン「澤ノ井園」で石の標本づくり清流ガーデン澤ノ井園はお昼時前で空いていました。東屋のテーブル席に座ると涼しい風が吹いてホッとしました。ここで「小石の標本」を作ってもらうことにしました。
 ここで拾える石は、泥岩、砂岩、礫岩、チャート、石灰岩、凝灰岩などの堆積岩です。これらの小石を用意した箱の中に並べて、接着剤で貼り付けます。次にニスを塗ってツヤを出すと色が鮮やかになります。最後にラベルを貼って完成です。
 理科の勉強みたいですが、たいへん楽しそうに取り組んでいました。お店では買うことのできない大切なお土産になったと好評でした。




小石の標本


3.「小澤酒造」の見学
2種類の名水を見学しました。一つは「蔵の井戸」と云われている蔵の裏山を140mも掘り進んだ横井戸から湧き出ているミネラル分の多い「中硬水」です。もう一つは「山の井戸」と云われている多摩川の対岸の山奥から導いている「軟水」です。





4.「御岳渓谷」を歩く
御嶽渓谷は、誰でも安全に散歩ができる遊歩道が整備されています。木陰のおかげで涼しく歩くことができました。
遊歩道を外れて川原に下りてみると、褶曲した地層のチャートが観察できます。大小のポットホールがあり、その成因について話し合うことで長い長い時間の流れを感じてもらいました。



5.美術館鑑賞と砂金探し
日本画の巨匠・川合玉堂を鑑賞する人と、川原に下りて砂金探しをする人に別れて活動しました。ゴールのJR「御嶽」駅までは歩いて10分程度です。



(文と写真:小林 道正)



銘酒「澤乃井」を醸す水ありて

 記録的な猛暑の中、涼を求めて奥多摩の渓谷を歩きました。実際街中に比べて3℃以上低い感じ。フットパスはほぼ緑の木陰になっており、谷を渡る風も爽やかで、暑さは気になりませんでした。今回のテーマは奥多摩の地質です。川岸には巨岩が露出し河原も石がゴロゴロしており、大地の成り立ちを考えるのにはよいところだと思います。JR奥多摩線「沢井」駅前に集合。小林先生の先導の下、先ず多摩川の河原へ。そこで河原の石の種類と地質学的な起源について解説がありました。砂岩、泥岩、石灰岩、チャートなど一億年以上前の中生代から古生代ものとのこと。各種の石ころを探して小さな標本箱を作りました。
 昼食後は奥多摩の蔵元・「小澤酒造」を見学しました。内部は思った以上に広く、奥行きがあり、案内の方の解説も興味深いものでした。印象的だったのは岩盤をくりぬいた中の醸造用の水の井戸です。奥多摩の地層を抜けたミネラルに富んだ地下水で、銘酒「澤乃井」が醸(かも)されるわけです。



その後川沿いに歩いて遡りました。夏は草木が葉を繁らせる時期で花は少ないのですが、道沿いにオレンジ色のノカンゾウの花が点々と咲いていました。道は川の流れから10mぐらいの高さです。そこに生えているということは、増水の時そこまで種が流されて来るのでしょうか。河原に転がる巨岩とともに自然の猛威を感じました。
最後は「玉堂美術館」の前で砂金採りです。今回はダメでしたが粘れば採れたかもしれません。盛りだくさんの楽しい一日でした。



(文と写真:森 正隆)

2023.07.22 12:57 | 固定リンク | フットパス
他のまちのフットパスをみてみよう麻布十番はどんなまち?
2023.07.09
[ 講師:みどりのゆび神谷 由紀子 ]
謎の多い麻布十番から白金台地を深掘りすると

7月9日(日) 天気:曇参加者:12名

前回は麻布十番から六本木など、港区の北側の麻布台地を巡りました。今回は麻布十番から四ノ橋経由で南側の白金台地を歩きました。白金というとセレブの邸宅のあるリッチな地域というイメージがありましたが、行ってみるとむしろ町人を中心とした下町が主体となった、落ち着いたまちでした。もともと麻布地域は南斜面の丘陵地で、白金は主に共有地でした。四代家綱、五代綱吉の時代に江戸城から半径3~4kmにある、麻布、白金の郊外に大名の下屋敷などが置かれ商人町もできました。景観や古川という水運にも恵まれ、昔から自然も人間の生活も豊かだったのでしょう。それが現在も高級な地域のイメージの割にはどことなく丁寧で暖かな人情があって、好感をもたれる理由ではないかと思えます。

今回のコースは仙台坂上から四ノ橋に南下します。かなり面白いのでお勧めです(暑くなければ)。
麻布十番駅→商店街→暗闇坂→阿部 美樹志邸→氷川神社一安藤教会→一本松→仙台坂上→薬園坂→釣堀坂→本村町貝塚→四ノ橋→白金商店街→三光坂→服部ハウス(服部金太郎邸)→聖心女子学園→雷神神社→白金北里商店街(昼食)→明治坂→医科研→港区郷土歴史館→悪水溜→国立科学博物館附属自然教育園→都立庭園美術館→白金台又はJR目黒駅
■麻布の発展は綱吉の「白金御殿」に始まった
「四乃橋」の北側、ちょうどいまのイラン大使館のあたりに江戸幕府の薬草園がありました。綱吉は眺めのよいここが気に入り、「白金御殿」を建築しました。これによって麻布の商店街や古川周辺の開発が進んだのです。薬草園は小石川に移転しました。
■太古は海岸だった(地形図参照):「釣堀坂」、「本村町貝塚」
釣堀坂を下った辺りが入り江で、そこから貝塚のある「本村町住宅2号館」の裏の崖が太古には海岸線であり、この海岸線を降りる坂が「薬園坂」で、浜辺の古川に接するところが「四ノ橋」なのです。
後ろの高台には綱吉の白金御殿、目の前には白金の草原が広がっていました。「四之橋」は江戸時代にピクニックの名所で、浮世絵にも描かれています。日本橋からの距離は約7㎞、徒歩だと約90分。橋の南には茶店や料亭が広がりました。
これが今の白金商店街の始まりです。




麻布十番白金地形図



歌川広重『名所江戸百景 広尾ふる川』(四ノ橋)
1856年(安政3年)

■大名屋敷から芸術的建築物へ:「聖心女子学園」、「東大医科学研究所」
丘陵地であるので山手には大名の下屋敷が多くありましたが、明治以後学校などになりました。聖心女子学園が明治41年に建設されました。正門は建築家ヤン・レツルの設計で、初等科の美しい校舎はアントニン・レイモンドです。



聖心女子学園正門前でみなさまと(写真:田邊)

「東大医科学研究所」は、明治25年に北里柴三郎が設立した「伝染病研究所」が明治39年に現在の場所に移転され、その後東京帝国大学付属になりました。安田講堂と同じ内田祥三の設計で造られたゴシック風の重厚な建物で、隣接する「旧国立公衆衛生院(現在は港区立郷土歴史館)」と共に保全されています。





「東大医科学研究所」正門と「旧国立公衆衛生院」(写真:田邊)

■水源池の跡:「聖心女子学園」・「東大医科研」・「悪水溜」
「東大医科学研究所」の木々の生い茂る窪地にかつて川の水源の池があり、ここから聖心女子学園を通って支流が古川に流れ込んでいました。医科研の西側には医科研によってせき止められた窪みができ、明治時代「悪水溜」と称され付近の下水を地下に浸透させていたそう。今回のウォークで、皆で煉瓦の擁壁がかなり長い範囲で残っているのを見つけたのは大収穫でした!


「白金台の悪水溜」の赤煉瓦の擁壁(写真:田邊)

■白金という地名
現在の「自然教育園」と「東京都庭園美術館」の広大な敷地には、室町時代に「白金長者」の館があったといわれ、その土塁跡が今も残っています。江戸時代には大名下屋敷に、明治時代には陸海軍の火薬庫に、そして大正時代には皇室の御料地となりました。
(文と資料:神谷 由紀子)



安藤教会(写真:横山)



「白金台の悪水溜」と現代のイメージの落差を楽しむ

麻布十番から白金へと今日のコースの概要を聞いたとき、地域の歴史や由緒もきっと華やかなフットパスになると思った。ま、ちょっと古いが「シロガネーゼ」という流行り言葉があったように、グルメやファッションそしてカフェや洋菓子を求めて、あの寅さん風にいえば「粋な姉ちゃんがチャラチャラ歩いてる」そんな街がイメージされた。
「薬園坂」を古川傍に下りるとその南側一帯は、印刷所や町工場が多いところだとの説明を受けた。後日港区のHPを覗いてみたら「白金、誇りの町工場」と自衛隊用の特殊なラッパを造っている工場の写真が載っていたので、このあたりは昔ながらの白金の記憶を残す下町感あふれる場所なんだと、そのイメージの落差が楽しめた。
目黒通りから北西に入ると結構な坂が下っていて、向こう側の高台を目にすることができる。底は悪水溜。スリバチ学会の皆川さんは言う、「この先に谷があるから、下りてまた上る坂になっている。Ⅴ字型の谷ではなくて、スプーンで掬ったようなスリバチ状の谷が東京にはたくさんあるのです」。ここ悪水溜は白金台にある、四方向とも閉じられた一級のスリバチ地形とのこと。「東京23区凸凹地図」には、「旧悪水溜」溜池の名残として煉瓦造の擁壁が残されている。貴重な一級スリバチ地形、と記されている。
「白金台の悪水溜」とつぶやいてみると、それは京極夏彦の妖怪話か、周五郎や周平の哀感あふれる時代世話物か、正太郎の梅安か犯科帳か、何か白金のイメージとは全く違う物語が紡ぎ出されるような思いにとらわれる。(文:岩崎 英邦)



「東京都庭園美術館」にて、お疲れさまでした!(写真:田邊)

2023.07.09 11:52 | 固定リンク | フットパス
農と緑の管理
2023.06.30
小野路里山にお越しください。

 当会の緑地と竹林は、町田市北部の小野路宿と調布市布田五宿を結ぶ、江戸期からの布田道に接しています。道幅が狭いため車が殆ど通らず、騒音と無縁な豊かな自然に恵まれています。
 月1回の管理作業は、この里山を味わいながら行っています。皆さま、昔懐かしい里山を訪ねて、ぜひ散策にお越しください。またご興味あれば、当会作業日のお試し参加も歓迎します。

景観とタケノコ目的で竹林を整備

1月15日(日) 天気:曇 参加者:6名

 昨年9月竹林の管理活用について専門家講義を受け、そのノウハウを活用し竹林管理を強化して来たが、春に向けて一層の整備を進めた。
 枯れた竹や傾いだ竹を伐採し、適当な間隔を確保することで、健全な孟宗竹を育成しタケノコも出易い環境作りに励んだ。

2月26日(日) 天気:曇 参加者:8名

 今回は参加者が多いうえ、チェーンソーや刈払機も活用したので、不要竹伐採や灌木下草刈りの作業が大いに捗った。
 その結果、竹林は今迄とは見違えるほど美しくスッキリした。また切通し付近の整備により、人気ある景観も改善された。

3月19日(日) 天気:晴 参加者:7名

 緑地裏の山地を調査した。10年来ご無沙汰の裏山は倒木多く篠竹も繁って踏み跡すら見えず、ヤブ漕ぎして何とか頂部の小祠に辿り着いた。
 次は竹林に向かい、不要小竹の除去などを進めたので、竹林は広々と見通しが良くなり、気持ち良く整備された状態に仕上がった。

4月16日(日) 天気:曇 参加者:12名

 今日はタケノコ試し掘り。竹林は整備したが、肝心のタケノコが見つからず、探し回って何とか小さいのを含め15本程度掘り出した。
 タケノコは毎年豊凶交互の傾向が強く、昨年豊作の反動か、今年は凶作の模様。また小野路地区は何処でも、貧作との情報も得た。

4月23日(日) 天気:曇時々晴 参加者:23名

 年に一度のタケノコ祭。多くの会員やゲストの参加を得て、必要数のタケノコを確保し、タケノコ入り豚汁を囲んで大いに盛り上がった。
 このアウトド ア・ランチを楽しみにしている方方は多いし、布田道通行者も増えているので、今後とも整備は進めていきたい。

5月7日(日) 天気:雨 管理作業中止

 通常のタケノコが終わった後は、穂先タケノコが採れると聞いたが、凶作年ではタケノコを掘り尽くしており無理と判明した。
 また緑地草刈りは、4月からの道沿い個人刈りにより、当面は急いで草刈りをする必要がないため、5月は完全中止とした。

日常的な環境保全活動

6月18日(日) 天気:晴 参加者:10名

 11日が雨天順延され、布田道へ落ちそうな木枝や枯竹の撤去、オオブタクサ抜去等の緊急課題解決を優先して作業した。
 当面のリスクは排除出来ても、継続して発生する問題につき、今後とも状況を見守りながら適切に対応していく必要がある。

恵泉女学園大学の田植えに参加

6月10日(土) 天気:曇参加者:40名(当会3名+家族)
 新入生を中心とした学部職員あげての田植えに、当会からは会員3名が参加して、楽しみながら体験実践することが出来た。


田植え(写真:恵泉女学園大学)

(文:合田英興)

初めての田植え

 恵泉田圃で、田植えを初めて体験した。緑地奥にある田圃は苗床、うるち米、餅米用の3枚に分けられて美しく並んでいる。先ず苗床田圃で苗取りをした。相当に長い長靴で田圃に入り、苗を取ったら軽く泥をすすぎ、ワラで束ねる作業。やっているうちに体重で足が泥に嵌まっていき不安になる。右足踵から動かそうとした途端、長靴が抜けそうなってバランスが崩れ、ドロンコ第1号となった。
 その後は裸足になり田圃に入った。ヌルッとした感触が足裏で感じられ、田水の冷やっこさが意外に気持ち良かった。長靴より裸足のほうが泥に潜っていかないのも意外であった。
 当会Nさんは今年もお孫さんと参加され、元関係農家のMさんは学生と会話しながら、楽しそうに裸足で作業されていた。アッという間の楽しい一時であった。 (文:新納 清子 )

森林のフィトンチッドは人の心身もリフレッシュ

 3月。今日は気持ちの良い晴天。民家のお庭には色とりどりにツバキ、スイセンやスミレ。布田道に面した作業小屋のある広場では、先月のロウバイに変わり、大木のコブシやレンギョウがお出迎え。この場所はいつ来ても心地良い。
 今日は裏山調査で急傾斜を登る合田さんと別れ、私たち6名は脇道から初めて裏山へ分け入る。気分はワクワク “みどりのゆび探検隊” 。
 木々の根が階段状に張り出ているため、滑らないように気をつけて登ると、小さな古い小屋のある草地に出た。大人でも思わず駆け出したくなる気持ちの良い場所。仲間とヨガやティーパーティなどしたら楽しいことでしょう! と思いながら、合田さんの指示に従い奥の細い道を進むと、大きなカシ?の木のある美しい竹林が続く。さらに道を上りきると、祠のある眺望の良い場所に辿り着いた。
 合田さんと合流後、いつもの竹林まで下って前回の伐採竹の整理と一面の小竹の刈り取り作業。陽当たりの良い広場がつくられた。
 作業帰りにはヤマザクラや満開のヨウコウザクラも見事。この里山を歩く度に自然に魅せられ、楽しみが増えて嬉しい。
 どうぞ皆さま、 森林浴においでください。
(文:松本 美津子)

今年もタケノコ祭がやって来た!

 昨年の9月に、竹林専門家の方のお話を聞いてから、竹を沢山切りました。神谷さんの呼び掛けで参加者が増え仕事もはかどりました。竹林には日がよく射し込み、風もよく通るようになり、サンショウはあちこちから生え、いつの間にかタラの芽も出ています。キンランやタマノカンアオイも静かに咲いています。
 タケノコ祭で嬉しいのは、普段はフットパスでしか会えない人と竹林で会える事です。タケノコ祭はタケノコを掘るのが目的ですが、この日は皆のお楽しみの日でもあります。
 まずはいつもの具がたっぷり入ったタケノコ汁、焼きタケノコ、タケノコの刺身 ( 特製木の芽ソース添え ) 、最近はこれに焼きリンゴが加わりました。今年は干し葡萄入りで、切り分けるとバターとシナモンがほのかに香り、ここでしか味わえない格別の一品で大人気です。
 焚き火では、焼きリンゴの他に除湿消臭に役立つお持ち帰り用の炭を焼きます。松ぼっくりは綺麗に焼け、今度は形がおもしろいレンコンの輪切りでも作る予定。試してみたい物があればお持ちください。一緒に炭を焼きましょう。
 今年はタケノコがあまり採れませんでした。来年は豊作でありますように。
(文:鈴木 由美子)


美しくスッキリした竹林(0206 写真:神谷)

  
タケノコ祭のタケノコ(写真:横山)とキンラン(写真:神谷)







タケノコ祭の楽しみ:
タケノコ汁、焼きタケノコ、
タケノコの刺身、焼きリンゴ
などを楽しむ参加者のみなさ
ま(写真:横山)


タケノコ祭に参加のみなさま(写真:神谷)